もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
◇
「まず、公爵家への手切れ金だが、君はいくら払うつもりなのだ? 君が考えてきた計画に沿おうじゃないか」
皇太子の執務室に通されて、レオナルドと最側近のアルヴィーノ侯爵、そしてキアラと侍女のジュリアで話し合いが始まった。
ちなみに仮の婚約だということは、付き添いの二人も知っている。
「私は金貨3000枚を支払うつもりです」
レオナルドは目を見張って、
「それは……破格だな」
「えぇ。ですが、これくらい払えばヴィッツィオ家は快諾するでしょう」
この金額なら、仮にダミアーノが反対しても、家門としては納得せざるを得ない。
彼らはリグリーア家が支払った持参金の半額にあたる前金を全て消費してしまったようだ。ほとんど借金の返済らしい。正式な婚姻後に貰う予定の、残りの持参金で事業を起こすつもりのようだ。
キアラが支払うの手切れ金はそれよりも遥かに多い。これならヴィッツィオ家を黙らせることができると確信していた。
レオナルドは紅茶を飲みながら思案する。キアラは少し不安になって彼を見た。
(反対……するかしら?)
常識的には破格の手切れ金。それは世間から見たら、キアラ側に非があると思われるかもしれない。
彼は適正価格を計算しているのだろうか。沈黙が長いように感じて、気まずい空気を隠すように彼女も紅茶に口を付けた。
ややあって、
「10000枚だな」