もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

 皇太子は皇后の陰謀でずっと北部へ追いやられていた。
 当初の計画はそこで名誉の戦死(・・・・・)を遂げるはずだったのに、図々しくも皇太子は戻ってきた。「英雄」というふざけた称号を勝ち取って。

 そんな戦いに明け暮れる人間と、首都で能天気に過ごす貴族令嬢に、いつ接点があったのだろうか。
 いずれにせよ、

皇太子(あいつ)のせいで、あの方からの信頼はぼろぼろだ……」

 すぐにでも何とかしなければならないと焦った。
 自分はそう遠くない未来に、第二皇子が皇位を継承した際に宰相になる身だ。その輝かしい栄誉を確実に手に入れるためにも、何とかしなければ……。

 キアラは地味で愚鈍で見ているだけで苛つくような女だったが、伯爵令嬢という身分、そして家門の財力は駒として丁度良かった。
 あの女を利用して、皇太子を廃して第二皇子を継承者に据える予定だった。

 だが、今はもうあれは皇太子のもの……。
 計画の変更は急を要した。
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