パパLOVE
そんなある日。

私は寝坊をして、いつもより登校してくるのが遅くなってしまった。

教室の前まで来ると、話し声が聞こえてきた。

恐る恐る教室に近づいて中を覗いてみると、そこには彼と岩谷さんがいた。

嫌でも2人が話す会話の内容が聞こえてきた。

「そんなことより、どうして私だとわかったの?」

「このクラスの連中を動かすことが出来るくらい力を持ってるのは岩谷さんくらいしかいないよ」

「わかってるなら、止めるように直接言ってくれば良かったじゃない」

「こんなこと意味ないって、わかってくれるって信じてた」

その会話から、私への嫌がらせを指図していたのが岩谷さんだということがわかった。

「何で散々嫌がらせをしてきたのに、櫻井さんが普通に学校に来れてたから不思議だった。まさかあなたが影で櫻井さんを助けていたとはね。このことは櫻井さんは知ってるの?」

「知らない。嫌がらせがあることも知らない。絶対に気付かせない。普通の学校生活を送らせてあげたいんだ」

「なるほどね」

「もう彼女に嫌がらせをするのをやめてもらいたい」

「嫌よ。あんな娘と同じクラスでいること自体、虫酸が走るのよ。さっさと障がい者のクラスに行けばいいのよ。あんなこっ‥」

パシっ…

彼は岩谷さんの言葉を遮るように、岩谷さんの頬を引っ叩いた。

「何するの!」

「ごっ‥ごめん」

「許さない。あなたのことも、あの女のことも」

パシっ…

すると今度は岩谷さんが走り去り際に、彼の頬を思い切り叩いて教室を出て行った。

ふと横から人の気配を感じたので振り向くと、教室の前のドアのところに飯田くんが立っていた。

飯田くんもまた、私と同じように2人の会話を聞いてしまったらしい。

そして私は彼らに気付かれる前に急いでその場をあとにした。

だからそのあと彼と飯田くんのやり取りは見ていないし、わからない。


次の日の放課後、私を除いたクラス全員で学級会が行われた。

気になって物陰に隠れて教室の様子をうかがっていると、担任の柿沼先生だけでなく、校長先生と教頭先生までもが教室に入っていくのを確認することが出来た。

私抜きで学級会をしているところを見ると、私に関する内容の話し合いが行われているのは火を見るよりも明らかだった。

学級会が行われた翌日から、私の上履きに砂が入れられることも、机に落書きがされることも、体操着がイタズラされることもなくなった。

それは朝一番に学校に登校してきて何回か確認していた。

それでも、彼は誰よりも早く学校に来て、私の上履きをすり替え、私の机を確認し、持って帰って洗ってきた体操着を持ってきてくれた。

本当に申し訳ない気持ちでイッパイだった。

何で、こんな私のために、こんなことまで…。
< 122 / 377 >

この作品をシェア

pagetop