パパLOVE
「いただきます」

とりあえず食べ始めたものの、やっぱりママの煮込みうどんは最高で、ひとくち食べたら箸が止まらなくなっていた。

やぱっ…

気付いたら半分以上食べていた。

「ママ、お腹いっぱいになっちゃったから、あとで食べてもいい?」

「残ったのはママが食べちゃうからいいわよ」

「美味しいからあとで食べたいんだけど…」

「また作ってあげるからいいでしょ?」

「それならいいよ」

ママ、ごめんね。

でも、今日はパパと会うから許して。

夕飯を食べ終わると、体はダルかったけどシャワーを浴びた。

汗臭い体でパパに会うのは嫌だったし、何があるかわからないから体はキレイにしておかなくちゃいけないし…。

着替えをして時計を見ると、時刻は18時を回っていた。

そろそろ準備しなきゃ。

でも、今日は早退をした訳だし、クラスの連中とバッタリ会わないとも限らない。

仕方ない…少し変装でもしてから行くしかないか。

私は地味目の茶色っぽいTシャツにベージュのスラックスを履いた。

髪の毛が隠れるように帽子をかぶり、マスクをしてリュックを背負った。

これで完璧。

私だって絶対にわかる訳はない。

男か女かもわからない。

少年のようにも見える。

さて、ママに気付かれずに家を出なきゃいけないんだけど、どうしよう?

部屋のドアを開けてママの様子を探ろうとするとリビングからピアノの音が聞こえてきた。

どうやらママはリビングにあるピアノを弾いているようだった。

それにしても本当に上手いな。

聴き入っちゃう…。

でも、これなら気付かれずに家を出られる。

私はママにバレないように玄関までの廊下を静かに忍び足で歩いた。

外に出て玄関の鍵をかけようとしている時も、中からはピアノの音が聞こえてきた。

良かった。

気付かれずに外に出ることに成功した。

それから歩きで駅までやって来ると、あと10分で19時になろうとしていた。

パパが乗っているであろう電車は19時03分着だから、あと少しでパパに会える。

少し心配なのは私の体調。

シャワーを浴びてから妙に体がダルくなったのはわかっていたけど、ここに来て何だか熱っぽくなっているのを感じた。

ホントにタイミングが悪い。

マジでイラつく。
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