パパLOVE
「香澄は興味なくてもむこうはあるんじゃないか?」

「何で?」

「何でって…」

「香澄ちゃん、それで三枝先輩何だって?」

「連絡先を教えてくれって」

「何て答えたんだ?」

「教えちゃったの?」

舞香は不安そうな顔で私を覗き込んできた。

「教えてないよ。スマホ持ってないって言った」

「そんなベタな嘘を信じるヤツがいる訳ないだろ」

「香澄ちゃん、エラい」

「舞香は黙ってろ」

「だったら家電を教えてくれって言われたから、親に聞かないとわからないって言っといた」

「三枝も聞いた相手が悪かったな。気の毒に」

「それでいいの。香澄ちゃんにしては良くやったよ」

「イェーイ。それで何で私の連絡先なんか聞いたんだろ?」

「おいっ」

なぜか詩美に肩を叩かれた。

それから下駄箱で靴に履き替えて外に出ると、グランドで部活をしているサッカー部の男子生徒たちが目に入ってきた。

練習をしている人の中で一際目立っている青いジャージを着た男子がいた。

先程私に話しかけてきた三枝先輩。

グランドの周りには黄色い歓声をあげている女子生徒が20人近くいた。

どうやら三枝先輩が目当てのようだ。

背が180cmあるスラッとしたモデルのような体系と、茶色のサラサラヘアに甘いマスクはさぞかし女子生徒から人気があるんだなと思いながらグランドを横切った。

私には興味ないな。


バイト先のファミレスに到着すると、事務所でパソコンに向き合っている店長に挨拶をしてから女子更衣室に入った。

それから制服に着替えて事務所に入って行くと、先輩の女子生徒が店長に強い口調で何かを言っていた。

またか…。

きっと他のスタッフへの不満を黙って聞いてるんだろうな。

中山店長は32歳の独身。

中々の切れ者で、仕事のことなら何でも知っている。

この店舗に来る前は、数店舗で店長をしてきて店を立ち直してきたと噂で聞いたことがあった。

仕事ぶりを見てる限り、確かにそれぐらいの手腕は持ち合わせている。

それに、店長はスタッフから仕事のことはもちろん、仕事以外のことも相談にのってあげたりしている。

聞き上手で、的確なアドバイスをしてくれる店長に相談を持ちかけるスタッフは結構いた。

今日は先輩の愚痴のようだけど…。

毎回のことながら店長って大変だなとイスに座りながら素知らぬ顔をして見ていた。

そんな店長だけど趣味は読書と映画鑑賞。

それに舞台を見に劇場にもよく足を運んでいると聞いたことがある。

なかなか渋い趣味をお持ちのようだ。
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