パパLOVE
「柊木、もういいわ。疲れたから帰る」

「お嬢様、ただいま到着致しました。どうぞお外へ」

「出たくないわ。何で私がわざわざ足を運ばなくてはいけないのかしら。庶民が私に会いに来るならわかるけど、この私が会いに行くなんてあり得ないわ」

「お嬢様がそう仰るのもわかります。でも、来てしまったんですから、西島様の顔を一目みて帰られてはいかがでしょうか?」

「・・・・・」

私が不貞腐れていると私の横のドアが開かれて、外から柊木が「お嬢様どうぞ」と言って手を差し伸べてきた。

仕方なく、嫌々と柊木の手を取って車の外に出た。

ここって…小学校?

「お嬢様、こちらでございます」

柊木のあとをついていくと、学校の校庭の前まで来ていた。

そこではサッカーの試合が行われていた。

「西島様がこのサッカーの試合に出られています。小学3年生ながらにレギュラーでフォワードというポジションに選ばれたようです。もう少しで試合が始まります」

彼がこの場にいると聞いただけで嬉しいのに、サッカーの試合に出場する彼を見られるなんて…信じられないくらいドキドキしてきた。

私は彼の姿が見たくて彼のチームが集まっているコートまで歩を進めた。

既に多くの観客たちが集まっていて、中々先に進めなかったけど、それでも人混みを掻き分けて最前列までやって来た。

あっ…

直ぐに彼の姿が目に入ってきた。

ブルーのユニフォームを着た彼はいつもの優しい笑顔を振りまいてくれる人ではなく、凛々しく堂々とした面構えをしていた。

人生で初めて男性を見て格好良いと思ってしまった。

そんな彼の姿にしばらくの間、見惚れてしまった。

「あれ?なみちゃん?」

私の視線を感じたのか、彼は私を見つけると手を振りながらこちらに歩いてきた。

「やっぱり、なみちゃんだ。もしかして試合を観に来てくれたの?」

「たまたまよ。学校の前を通りかかったら、サッカーの試合をしているようだから見学しに来たの」

「こんなところで会えるなんてスゴい偶然だよね。良かったら、試合観て行ってよ。なみちゃんが観ててくれるなら、たくさんシュート決めるからさ」

「余り時間がないんだけど、どうしてもって言うなら、少しくらいなら観ていってあげてもいいわ」

「やったぁ。ぜったいにシュートを決めるからね」

「がんばって」

素っ気なく話してはいるけど、内心ドキドキで心臓が張り裂けそうだった。
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