パパLOVE
「なみちゃんが見ててくれたから5点もシュートを決めることが出来たよ」

「私が見てなくても出来たでしょ」

「いや、そんなことないよ。なみちゃんが観てくれてると思ったら、すごく力が湧いてきていつもより頑張れた」

「バカなこと…言わないで」

コイツ、何で泣かせるようなことを言ってくるのよ。

再び目に涙が溜まり、今にも溢れ出しそうになってきた。

ヤバい…どうしよう…

「お嬢様、こちらを向いて下さい」

柊木にそう言われたので振り向くと、柊木は胸ポケットからハンカチを取り出して私の目にそれをあててきた。

「お嬢様、顔が汚れてしまいましたよ。このままジッとしていて下さい」

「バカっ。でも、ありがとう…」

柊木は私の涙が止まるまで、ずっとそうしてくれた。

「なみちゃん、今日はありがとう。また、公園で遊ぼうね」

「暇だったら、遊んで差し上げるわ」

「うん、じゃあねバイバイ」

そして彼はチームメイトに手を引かれて連れて行かれた。

そんな彼のうしろ姿を見ていたら、もっと一緒にいたいと思った。

寂しさが込み上げてきた。

「待って…」

その声は聞こえることはなく、彼は私の視界の片隅から徐々に消えて行ってしまった。

こんな気持になったことがないから、どのようにこの気持を整理したら良いのかわからず、その場にしゃがみ込んでしまった。

「お嬢様、帰る準備をしてきますので、少々お待ち頂けますか?」

柊木の言葉に返す余力もなく、小さく頷いた。

それから5分くらいして柊木は戻って来た。

「お嬢様、行きましょう」

「えぇ」

前を歩く柊木のうしろをダラダラと歩いた。

これってもしかして、不貞腐れてると言うやつなのかしら?

この私が不貞腐れてるの?

信じられない…。

そんなことを考えていたら私の家のリムジンの前までやって来ていた。

「お嬢様、楽しんできて下さい」

理由の分からないことを言いながら柊木は後部座席のドアを開けてくれた。

何ニヤけてるの?

気持ち悪い。

車に入ろうと中を覗き込むと信じられないことが起こっていた。

私は頭が混乱して、開いたドアを慌てて閉めた。

あれ?

今のって?

間違いないわよね…

「なみちゃん、どうかしたの?」

ドアを開けて中から出てきたのは彼だった。

柊木、やってくれたわね。

余計なことを…。
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