パパLOVE

「別に何でもなくってよ。さぁ、車に乗りましょ」

「うん」

車に乗り込もうとすると、助手席側の扉の前に立っている柊木と目が合ったので睨みつけた。

すると柊木は小さく首を傾げて不敵な笑みを浮かべた。

「ふんっ」

車に乗り込むと、彼はユニフォームの裾を捲り上げて匂いを嗅いでいた。

「どうかしましたの？」

「思いっきり汗をかいたから臭くなってないかと思って」

クンクン…

「別に汗臭くはないわよ。嫌いな匂いじゃないわ。どちらかとと言うと好きな匂いかしら」

汗臭くはないけど、男子がスポーツをしてかいた汗の匂いは何だか好き。

しかも彼の匂いな訳だから、今のうちに存分に味わっておこうかしら。

「良かった。なみちゃんに汗臭くて嫌われたくはないから」

「そんなことくらいで、あなたのことを嫌いになんかならないわ。それより試合で頑張ったからお腹でも空いたんじゃないかしら？」

「ちょっと減ったかも」

「それなら、どこかで食べて行きましょう。私がよく行く、フランス料理の美味しいお店があるからそこにしましょう」

「あのぉ…」

「どうかしました？」

彼が何かを言いたそうに俯いてモジモジしていたので聞いてみた。

「フランス料理よりも、たこ焼きとか焼きそばが食べたいな」

「それは美味しいの？」

たこ焼きと焼きそば…

聞いたことはある食べ物だけど、１度も口にしたことはない。

どんな高級レストランで出てくる料理なのかしら？

わからない…。

「すごく美味しいよ。なみちゃんは食べたことないの？」

「何を言ってるのかしら？私を誰だと思ってるの？たこ焼きとか焼きそばなんて高級レストランで食べ飽きるほど食べたわ」

「やっぱり、なみちゃんはスゴいなぁ」

「当たり前ですわ。私が食べたことのない物なんてないわ。柊木、たこ焼きと焼きそばが食べられる、高級レストランの店に行ってちょうだい」

「かしこまりました。お嬢様、あとのことはこの柊木にお任せ下さい」

「よろしくお願いしますわ」