パパLOVE
「お嬢様、到着致しました」

出発してから30分経った頃、車が止まり柊木が声をかけてきた。

柊木が私の横のドアを開けてくれたので外に出ると高級レストランではなく、どこかの商業施設の駐車場に来ているようだった。

「柊木、ここはどこ?」

「ショッピングモールでございます」

「何でそんなところに来てるの?」

「たこ焼きと焼きそばを食べるならフードコートで食べるのが1番かと思いまして」

「こんな庶民が来るような所じゃなくて、高級レストランにはないの?」

「たぶん、ないと思われます」

「なみちゃん、ここのフードコートで食べるたこ焼きは最高だよ。行こぉ」

彼は私の手を握ると、エレベーターホールに向かって走り出した。

彼に手を握られている。

嬉しい…

何だか幸せ…

そんな私たちのあとを、柊木が必死になってついてきていた。

それから1階までエレベーターで降りるとフードコートという色んな飲食店が所狭しと並んでいるブースにやって来た。

あちこちから、とても美味しそうな匂いが漂ってきて無性にお腹が減ってきた。

「意外と美味しそうな店がありそうね」

「何でも美味しいよ」

「私は口が肥えてるから味にはうるさいわよ」

「きっと納得してくれると思う。ここのたこ焼きは絶品だから」

「あら、そう」

彼はそう言っていたけど、庶民の美味しいとお金持ちの私の美味しいには天と地とのレベルの差があるのは火を見るよりも明らかだった。

まぁ、適当に美味しいと言っておけば彼も喜ぶでしょう。

「お嬢様、席を確保できましたので座っていて下さい」

それから柊木が確保しておいてくれた席に座り、柊木が買ってくるのを彼と一緒に待った。

「お嬢様、西島様、大変お待たせ致しました」

「遅いわよ」

「全然待ってないので大丈夫です」

柊木の買ってきたたこ焼きと焼きそばの容器の蓋を開けると、ものスゴく良い匂いがしてきて一気に食欲が湧いてきた。
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