パパLOVE
だけど、彼は私とは何年も会っていなかったし、連絡も取り合ってはいなかった。

もしかしたら、私のことを忘れてしまっている可能性は高い。

それでもいい。

もう1度ゼロからスタートすればいい。

たとえ彼が私を忘れてしまったとしても私は彼を心から愛している。

もう1度彼と出会い、関係を築いて行くのも悪くはない。

ただ、1つ気がかりなことがある。

それは運命のイタズラとでも言うのだろうか、彼の妹もF高に入学してくるというのだ。

妹と彼はあの忌まわしい事件のあと、別々に暮らしていた。

妹は記憶を失っていた。

あの事件のことも彼の存在も忘れてしまっていた。

妹は自分に兄がいる事自体記憶にない。

柊木からの情報だと、彼はそれから妹と直接は会っていない。

直接は会っていないけど、彼はこの9年間の間に幾度となく妹の西島香澄の姿を見に会いに行っている。

彼が妹に会えない、話しかけられない理由はわかっている。

ツラかったし苦しかったのは痛いほどわかる。

でも全ては妹のため、妹を守るために彼は妹に会わないという苦渋の選択を選んだ。

そして彼と同じように、彼の父親も自分の娘である西島香澄には9年間会っていない。

ずっと側で見守り、経済的にも助けてきたけど彼の父親は自分の娘には会わなかった。

それが自分の娘を守る唯一の方法だと信じていたから。

話しは戻るけど、彼は父親から妹が同じF高に入学してくることは聞いているらしく、相当楽しみにしているらしい。

でも、これから彼はどうするのだろう?

妹と接触するのだろうか?

たとえ会ったとしても妹は彼の記憶がない訳だから何も進展することはないだろう。

もしかしたら、彼は自分が兄だということを告白する可能性はあるけれど、どうするのかはわからない。
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