パパLOVE
素性は知らないけど、柊木が雇った人間であることはわかっていた。

柊木の話だと、詩美は仕事はしっかりこなすが、決して従順ではないといっていた。

見た目は不良っぽく、男勝りなところがあるという。

でも、見た目とは裏腹に性格は優しく女子力は高いと言っていた。

そんな人間が、あの妹を上手く取り込んで友達になれるとは到底思えないけど、賭けてみるしかなかった。

でも、運が良いことに詩美は妹と同じクラスになっていた。

面白くなってきたと思わざるをえなかった。


暦は6月。

高校に入学してから2ヶ月半が経とうとしていた。

私と三枝快斗との関係は良好だった。

何が良好かと言うと、小学生の時のような関係を取り戻すことが出来たからだ。

彼が部活を終えたあと、週1〜週2回のペースで食事に行ったり、夜景がキレイな絶景スポットに行ったりと色々なところに出掛けた。

彼は嫌な顔1つしないで私の誘いに乗ってきた。

彼がどのような感情で私と一緒にいるのかなんてわからないし、それを確認出来る訳もなく日々が過ぎて行った。


また、妹の方はと言うと、日野舞香という女子生徒と友達になり、いつも行動を共にしていた。

そしてもう1人、友達になっていつも一緒にいる女子がいた。

それは松乃詩美その人だった。

詩美は上手く妹の懐に入り込むことに成功して信頼を勝ち取ったようだ。

妹が詩美に心を許すようになって直ぐに私のところに連絡があった。

何の会話をして、放課後にどこに出掛けて、 バイト先ではどんな感じなのか、母親とはどんな関係なのかを事細かに報告してきた。

思った以上に使えるヤツかもしれない。

そして6月に入ってある日のこと、妹と日野舞香と詩美で学校の校門を抜けて歩いていると中年の男性に声をかけられた。

なんとその人物は、9年前妹の前から忽然と姿を消した妹の本当の父親だった。

そして何も知らない妹は泣いて喜んでいた。

何も知らないのは幸せなことで、何も知らない方がいいことだって沢山ある。

でも、父親が会いに来たということは何かが変わろうとしていることだけは間違いなかった。
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