パパLOVE
私はこんなにも彼のことが好きで、愛していて、自分の命さえも彼のためなら投げ出せると思えていることに驚いた。

ドンッ――

突然妹は私と彼を突き飛ばして走り去った。

妹は腹を立てたらしい。

私と彼のキスを目の前で見て、嫉妬の気持ちが芽生えたのかもしれない。

何かを思い出すキッカケになったのかもしれない。

私の思惑どおりだわ。

「なみちゃん…ゴメン」

「何のことかしら?」

「キスしちゃったこと…」

「あなたは私に従っただけ。あなたは何も悪くないわ」

「でも…」

彼はキスをしたことをかなり悔やんでいるように見えた。

「嫌だったなら謝るわ」

「嫌じゃないよ」

「キスぐらいで何をうろたえているのかしら。外国ではキスは挨拶みたいなものよ」

「そうかもしれないけど、僕にとっては特別なことだから」

私にとっても特別なことだけど、そんなこと言えない。

「そうなの。純情なのね」

「初めてだったんだ。キスをしたの…」

その言葉を聞いた瞬間、胸がキュンとするのと同時に、感激と感動で涙が溢れ出しそうになった。

「・・・・・。もう行くわね」

それだけ言い残すと、私はその場を立ち去り自分の教室に向けて歩き始めた。

既に目から涙が溢れ、視界が滲んで真っすぐ歩けなかった。

1階から2階の踊り場で、しばらく立ち止まっていると、上の階から階段を駆け下りてくる足音が聞こえてきた。

私は慌てて持っていたハンカチで涙を拭き取って平静を装いながら階段をあがろうとした。

「白川さんっ」

名前を呼ばれたので顔を上げると、妹の友達の日野舞香と詩美が目の前に立っていた。

「何か用かしら?」

「白川さんに聞きたいことがあるの?」

「私に?もしかして西島香澄のことかしら?」

「そう…白川さんは香澄ちゃんの秘密を何か知ってるの?」

「知ってるわよ」

「何を知ってるっていうの?」

「全てよ」

「全てって…」

「それって何なんだよ?」

日野舞香だけじゃなく、それまで黙り込んでいた詩美も横から話に入ってきた。
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