パパLOVE
「お願い、あなたの知っていることを全て教えて…教えて下さい」

妹は涙を流しながら深々と頭を下げてお願いしてきた。

「そんなに教えて欲しいなら明日の放課後、私と一緒にある場所に行くわよ」

「ある場所って?」

「行ってからのお楽しみよ。それと、あなたマイナンバーカードはお持ちかしら?」

「持ってるけど…」

「それなら、明日持ってきてちょうだい。印鑑も忘れずにね」

「わかった…」

明日、私は妹を連れて役所に行こうと思う。

そこで妹の戸籍謄本を発行させるつもり。

そこまでして、真実を知らせる必要があるのかと疑念を抱く人はいると思うけど、そこまでしないと妹はきっと現実を受け入れることなど出来ないと思う。

ましてや、妹は記憶を失っている。

私の言葉だけで信じるとは到底思えない。

だから戸籍謄本という証拠を突きつけて逃げ道をなくし、受け入れる以外に道はないことを思い知らしてやるつもり。

でも、戸籍謄本を見せるということは、彼が兄だという事実を知るだけでは済まされないと言うこともわかっている。

西島家がずっと隠してきた禁断の扉を開けることになってしまう。

妹には、あぁは言ったもののハッキリ言って迷ってる。

私が西島家の秘密を独断で妹に見せてしまうことが本当に正しいのかわからない。

わからないけど、妹にも知る権利はあるし、全てを受け止められる年齢にはなってきていると思う。

このまま行けば、彼も父親も本当の悲しい真実を永遠に秘密にしていくに違いないし、妹の記憶が蘇るまでは今の生活を続けて行くに決まってる。

でも、もしこのことを妹が知ってしまったとしたら、妹とあの人の関係はどうなってしまうのだろうか?

あの人は自分の人生を全て捨てて尽くしてきた。

夢も将来の希望も約束されていた未来も全て捨てて妹に人生を捧げてきたあの人のことだけが気がかりと言うか、私の決断力を鈍らせた。
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