パパLOVE
翌日の放課後。

下駄箱で妹と待ち合わせをして、校門の外に迎えに来ていたリムジンに乗って市役所に向かった。

車に乗ってから、妹の様子が、どこかソワソワして落ち着きがなかった。

最初は初めて乗る高級車のリムジンに緊張しているのかと思っていた。

「こんな高級車に乗ったの初めてだから、緊張しているのかしら?」

「緊張?何で私が?」

「なら、何でそんなに落ち着きがないのかしら?」

「それは…何でもない」

「まぁ、いいわ」

それから車は10分程度で目的地に到着した。

「着いたわよ。さっさと行くわよ」

そうは言ったものの、私の中で迷っている部分があった。

妹の心配など1ミリたりともしていない。

私が心配しているのはあの人のことだ。

妹の方も迷いが生じたのか歩く速度は遅く、足取りが重かった。

それでも何とか役所の入口を抜けて、記帳所までやって来た。

「この用紙に記入するのよ」

私は柊木から渡された戸籍謄本の申請書の紙を妹に手渡すと、妹は何かを言いたげに私を見ていた。

「何かしら?この期に及んで迷ってるのかしら?」

「そんなんじゃない。昼休憩が終わって教室に戻ったら、持ってきていたはずのマイナンバーカードと印鑑が盗まれてたの…」

「は?誰があなたの物なんて盗むのよ。適当なことを言ってないで、正直に怖気づいたって言いなさい」

「違うんだってばっ!」

妹は記帳所の机を叩くと、怒鳴りつけるようにそう言った。

周りにいる人たちの視線が一気にこちらに集中した。
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