パパLOVE
なみちゃんがアメリカに渡ってから数カ月が経った。

今日は家族で家から歩いていける距離にあるファミレスにランチを食べに向かっていた。

するとお父さんは声をかけてきた男性にサインをしてあげていた。

その男性とお父さんは楽しそうにお喋りをしていた。

どうやらお父さんのファンの人で、先日から始まった舞台を見てきたと言う話らしい。

彼の名前は中山さん。

とても感じの良い好青年だった。

「キャ―――」

突然、うしろから女性の悲鳴が聞こえてきた。

声のする方を見ると…

手には刃渡り30cmはある包丁を持っていた。

するとその女性は何かを叫びながらこちらに向かって走ってきた。

何が起きているのか理解が出来ず、逃げることすらも忘れてしまっていた。

「快斗っ、逃げるんだっ」

僕を呼ぶお父さんの怒鳴り声が聞こえた。

次の瞬間、女性が振りかざした包丁が僕に向かって振り下ろされた。

ザクッ――

と思った瞬間、左腕に激痛が走った。

「えっ」

腕を見ると、服は引き裂かれ腕からは血が滴り落ちていた。

「死ねっ」

女は再び包丁を振りかざすと、それを振り下ろしてきた。

「快斗くんっ」

僕の名前を呼ぶと同時に僕の前に誰かが立ち塞がった。

そして女が振り下ろした包丁を素手で受け止めていた。

「快斗くん、早く逃げるんだっ」

「死ね死ね死ねっ」

女は狂ったように「死ね」という言葉を連呼して中山さんという男性から包丁を強引に振り解こうとしていた。

「ぐわっ」

とうとう包丁を掴んでいた中山さんの手は血だらけになり、包丁は手のひらを切り裂いた。

次の瞬間、恐怖でしゃがみ込む僕は誰かに抱きしめられた。

この感触…

この香り…

お母さんだ。

お母さんに抱きしめられてスゴく安心した。

ドッ――

「うっ…」

何か鈍い音がしたと同時に衝撃が僕にも伝わってきた。

グサッ――

グサッ――

グサッ――

何度も何度も鈍い音がしては、その衝撃が僕の体に響き渡った。
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