パパLOVE
「まったく…聞いているこっちが恥ずかしくなる。でも、ありがとう。だったら僕も言わせてもらうよ。僕には同じ道を一緒に歩んでくれる仲間は沢山いるかもしれない。でも、同じ道を共に立って、楽しさ、悲しみ、幸せ、痛み、苦しみを分かち合っていけるのは世界でたった1人しかいない。そんな友達に僕は言いたい。ずっと一緒に一生、生きて行こう。なぁ、月」

「あぁ、そうやな。お前が嫌やって言うたってわしは離れるつもりはあれへんけどな。一生お前のそばにおるからな。覚悟しときや」

「そうやな。僕も一生、月を離さへんからな。覚悟しときや」

「何やそのけったいな関西弁は。でも、おもろいから許したるわ」

「おおきに」

その日は久しぶりに月を自転車のうしろに乗せて帰った。

いつもより2人とも口数が多いような気がした。


6年後――

今、僕はプロのサッカーチームに所属している。

高校を卒業して直ぐにプロ契約をしてJ1リーグの東京WÇに入団し試合に出させてもらっていた。

去年は得点王という輝かしい成果をあげられた。

また、遡ること数年前の高校時代、僕のF高校は全国サッカー大会で3連覇を果たした。

いつもベンチには結菜がいてくれた。

そして結菜との約束を守ることが出来た。

今日はワールドカップの予選の試合がある。

数日前に開催国のスペインにやって来ていた。

今は宿泊ホテルからサッカーの試合会場に向かっているバスの中。

「快斗、そのぬいぐるみだいぶ汚れてきてるんじゃないか?」

「いつも試合がある度に、一緒に連れて行ってますからね」

隣の席に座っている日本代表のキャプテンの武田さんに話しかけられた。

「洗ったほうがいいんじゃないか?それより背中の部分が破れてるみたいだぞ」

「えっ‥本当ですか?」

ジェラートピケのクマのぬいぐるみの背中を見てみると、縫い目の部分が裂けて中の綿が少し出てしまっていた。

中に綿を押し込もうと指で突いていると変な感触がした。

中に何か入っている?

慌てて指を入れて中に入っているものを取り出した。

それは小さく折りたたまれている手紙のようだった。
< 302 / 377 >

この作品をシェア

pagetop