パパLOVE
ちなみに学校はサボってはいたけど、全然行ってない訳ではなく、3日に1度は教室に顔を出すようにしていた。

定期試験も受けてそこそこの点数は取っていた。

実は私も、お母さんも何度か担任に呼び出されて面談をしたことがあった。

そこで担任からは少しでも出席し、定期試験も受けていれば進級はさせてくれると言われたからだ。

それは私だけでなく、芽依も沙弥も同じような話をされていた。

でも親からは特に咎められることはなく、「警察の世話になることだけは絶対にしないこと。ピアノは続けること」。

それだけは約束させられた。

だから学校はサボるし、不良少女みたいな生活を送ってはいたけど、ピアノの練習だけは欠かさなかった。

週4回のピアノ教室も休まず通い続けた。

そして学校をサボるようになってからも、1度だけ雑誌の取材を受けたことがあった。

雑誌には天才女子高生ピアニストとして取り上げられていた。

普段の生活を知っていたら、とてもじゃないけど雑誌で紹介されるような人間じゃないことはわかるだろうけど…。

そんな不良ピアニストではあったけど、みゆきさんとマスターは応援してくれた。

先日行われたピアノコンクールには会場に足を運んでくれた。

そして私が賞を取ると、みんなで焼き肉を食べに連れて行ってくれた。

私のことなのに、みんな自分のことのように喜んでくれて祝ってくれた。

そんなある日のこと、みゆきさんに「南風」の片隅にあるピアノを営業中に演奏してみない?と聞かれたことがあった。

私は二つ返事で答えた。

そうして始まることになったピアノ演奏だけど、みゆきさんとマスターからは特に何を弾いてくれとか言われなかったし、好きな曲を弾いてみんなに聞かせてあげてとしか言われなかった。

だから「南風」に食事に来られるお客さんに気持ち良く落ち着いて食事をしてもらえるような曲というかジャンルをネットで調べたし自分なりに考えた。

そこで初めて知ったのがラウンジミュージックと言うもので、ジャズやボサノヴァと言ったジャンルの音楽だった。

どういうものなのかをユーチューブで検索して聞いてみた。

1度聞けば、殆んどの曲を耳コピ出来るので何十曲も聞いて憶えた。

そして耳コピしたジャズとボサノヴァの曲をみんなの前で演奏した。

すると思った以上に好評で多くの拍手喝采を頂いたし、お客さんから沢山のリクエストをもらって演奏した。

雑誌で紹介されて、そこそこ有名になっていた私の演奏を聞きに「南風」に来られるお客様も結構いた。

時々チップをもらったりもした。

このお金は私たち3人の遊ぶお金に変わったのだけど。
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