パパLOVE
「みゆきさんは子供好きなのにマスターがね」

「きっと子供が好かんけん子供ば作らんっちゃん」

「みゆきさん、かわいそうです。時々、子供連れの家族を見て、寂しそうな顔をしてるのを何度も目にしました」

「マスターって女心が全然わかってない」

「男ならみゆきさんの気持ちもわかってあげなつまらんやろ」

「あの強面じじい、最低です」

以前、そんな話しを３人でしたことがあった。

ランチタイムが終わり、片付けをしている時、みんなでそれとなくみゆきさんに話しかけてみた。

「みゆきさん、本当に子供好きですよね？」

「そうね」

「あやし方も上手かし、きっと良かお母しゃんになるて思うばい」

「ありがとう」

「子供欲しくないんですか？」

「欲しいって言えば欲しいかな」

その言葉を聞いた瞬間に、私たちは揃ってマスターを見た。

マスターはまるで聞こえていないような表情で黙々と仕事をしていた。

「なら子供を作りましょうよ」

「そうばい。作った方が良かばい」

「だったら決まりですね。みんなでマスターに頼みましょう」

「ねぇ、マスター、子供をつっ‥」

バンっ――

私の言葉を遮るような何かを叩きつけたような衝撃音が店内に響き渡った。

ものスゴい音に私たちは驚き、膠着して動けなくなった。

「いい加減にしろ！２度とそういうことを言うんじゃない！」

低音でドスの聞いたマスターの怒鳴り声は、一瞬でこの場を凍りつかせてしまった。

「マスター、怒らないであげて」

「お前は黙ってろ」

マスターはそれだけ言い残すと、店の入口を乱暴に開けて外に出て行ってしまった。

私たちは何も言えず、ただ黙って立ち尽くしていた。

でも、１人だけはマスターのあとを迷うことなく追いかけて行ってしまった。

いずみんだった。
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