パパLOVE
「香澄、朝だよ。香澄っ」

「あさ? まだねむいよぉ」

「学校に遅れちゃうから」

「わかったぁ。んんんん〜」

布団から起き上がり伸びをしてると、壁の時計が目に入ってきた。

6:05。

いつも起きる時間だ。

さすがパパ、わかってるねぇ。

「1度家に帰るんでしょ?」

「うん、ブラウスとジャージは洗濯したものと交換してくる」

「家まで送るよ」

「うぅん、大丈夫」

ママには舞香の家に泊まってることになってる。

パパに送ってもらったら嘘をついたことがバレちゃう。

それにしても、こうやって普通に話しているけど自然とパパの唇に視線がいってしまう。

私とキスをした唇。

もう1度パパとキスがしたい。

何度だってしたい。

許されるなら今直ぐにだってしたい。

「香澄、どうした? パパの顔に何かついてる?」

「ついてない。唇が…」

「くちびる?」

「違う違う、何でもないよ」

危ない危ない…

それからパパが用意をしてくれた朝食を食べてから、途中まで送ってもらった。

そして自宅のマンションが目の前まで差し掛かると、入口には人が立っていた。

「ママ…」 

それがママだとわかるのには殆んど時間はかからなかった。

私は「ママっ」と叫びながらママのところまで走った。

「香澄、おかえりなさい」

「ただいま」

私はママに抱きつき腕を首に回した。

いつの間にか、私の背はママとさほど変わらないくらい大きくなっていた。

ママの顔を見ると、目は赤く目の下にはクマができていた。

「ずっと待ってたの?」

「ちょっと前から」

「ママ、1人で寂しくなかった?」

ママは私がいないと駄目な人だった。

ママが寂しがりやだとわかっていたのに、私は欲望のままにパパの家に泊まり、ママを1人にしてしまった。

それに、ママのことだから心配で眠れなかったかもしれない。

「大丈夫よ」

「ゴメンね」

この言葉は1人きりにしてしまったことへの謝罪と、嘘をついてしまったことへの謝罪だった。

「さあ、早く着替えて学校に行ってきなさい」

「うん」
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