パパLOVE
「詩美ちゃん、もうよそう」

舞香は詩美をそっと抱きしめると、背中をさすってあげていた。

「みんなだって自分のパパのこと好きでしょ。私だって一緒だよ。変なこと言ってないでしょ?」

「香澄ちゃん、わかった。香澄ちゃんの気持ちは十分わかったよ。ね、詩美ちゃんもわかったよね?」

「あぁ…」

詩美は頷くと、食堂に向けて1人で歩いて行ってしまった。

舞香は「行こう」と言って私の手を握り詩美を追いかけた。

この日は、学校が終わると直でパパのマンションに向かった。

私にはパパからもらった合鍵がある。

いつでもパパの家にあがれる。

学校でパパにメールをすると《仕事があるから家に帰るのは23に過ぎになるよ》と返信があったので、帰って来ていないのはわかっていた。

パパの家に入ると、部屋中を見て回った。

男性の独り暮らしにしては掃除が行き届いているし、物もキレイに片付いていた。

パパはママと別れてからずっと自分のことは自分でやってきたんだとわかった。

掃除洗濯、料理もずっと1人でやってきたんだ。

仕事をしながらの家事はきっと大変だったに違いない。

そう思ったら居ても経ってもいられなくなった。

これからは私がやってあげる。

家の中のことは私が全部やってあげる。

だから、早速脱衣所にあるパパの洗濯物を洗濯機の中に入れて、洗剤と柔軟剤をセットした。

電源のスイッチを入れる前に、パパの下着を手に取って匂いを嗅いだ。

パパの匂いがした♡

少しばかり汗の匂いがしたけど、逆にそれがよくて何度も匂いを嗅いでしまった。

洗濯機の電源を入れてスタートボタンを押したあと、お風呂掃除をした。

自分家でも時々、お風呂掃除は手伝っている。

浴槽と洗い場を専用のスポンジを使ってゴシゴシとこすった。

パパの家も私んちと一緒で浴槽と洗い場のスポンジは分けて使っていた。

前に、舞香と詩美と家の手伝いの話になって、浴槽と洗い場のスポンジを分けているかという話になったけど、2人の家はスポンジは分けてないらしい。

それが普通なのかもしれない。

これ以外にも他の家ではやってなくて、私んちとパパの家がやっていることは結構あった。

それはきっとパパが一緒に住んでいた時の名残なのかもしれない。

それからトイレも便器と床を掃除した。

そうこうしていると、洗濯機の終えるメロディが流れてきたので、洗濯物をカゴに入れてベランダに干した。

それでも時刻は22時半だった。

夕食の準備をしたいところだけど、私は料理だけは出来なかった。

家では時々ママの手伝いをすることはあっても、材料を包丁で切ったり、炒めたり焼いたりすることしかやったことはない。

こんなことなら料理をママから真剣に教わっておけばよかった。
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