パパLOVE
「パパの鞄持ってあげる」

「ありがと」

片手でパパの鞄を持ち、もう片方の手でパパと手を繋いでパパの家に向かった。

部屋に入ると溢れる気持ちが抑えきれなくて再びパパに抱きついた。

「パパがお風呂に入ってる間にどこに食べに行きたいか決めておいて」

「パパと一緒ならどこでもいい」

「そっか。ならいつもパパが行ってる居酒屋に行こうか?」

「行く。行きたいっ」

それからパパは冷蔵庫から取り出した缶ビールを飲み干してからお風呂に入った。

お風呂に入る前にお酒を飲むと酔いが回ってしまうと聞いたことがあったので心配になった。

なので脱衣所の扉を開けて中に入った。

「パパ、大丈夫?」

「香澄、どうかした?」

くもりガラス越しでも、パパが髪を洗っているのがわかった。

「さっきお酒飲んでたから。お風呂に入る前に飲むのは良くないって聞いたことがあったから」

「それで心配して来てくれたのか?」

「うん」

「大丈夫だよ。心配しなくて平気だよ」

「でもさ、1人でいる時に浴室で倒れたら誰も助けてくれないんだから気をつけて。香澄がいる時ならいいけどさ」

「わかった。1人の時は飲まないようにするよ」

「そうして」

それからリビングに戻ると、テーブルの上にあるパパのスマートフォンが目に入ってきた。

気にならない訳がなかった。

パパの電話の相手やメールの相手、内容が無性に知りたくなった。

悪いことだとわかっていたけど我慢が出来ず、気づくとテーブルの上のスマホを手に取っていた。

まだ、パパはお風呂に入ったばかりだから、直ぐには出てこない。

見るなら今がチャンス。

私はスマホの電源を入れて、メールの送受信の履歴を確認した。

頻繁にメールのやり取りをしている人間は数人いるのがわかった。

メールの内容を見てみると、どの人物も仕事関係の人のようだった。

女性とのメールは見受けられなかった。

恋人というか特定の女性がいるようではなかった。

ちょっと安心した。

次に電話帳の着信履歴と発信履歴を調べてみると、女性の名前が2人あった。

1人目は「瑠美」という名前。

2人目は「沙織」という名前。

特に頻繁に連絡を取り合っているのが「沙織」いう女性だった。

毎日のように電話で話している。

パパから電話している時もあれば、向こうからかけてくる時もある。

でもメールのやり取りは殆んどないに等しかった。

すごくムカついたし、イライラが止まらなくなった。

この「沙織」という女性はパパとどういう関係なんだろうか?

許せない。

瑠美という女性も許せないけど、この沙織という女性はもっと許せない。

きっとパパがカッコいいからちょっかいを出しているに違いない。

私は怒りで何も考えられなくなり、我を忘れてパパのスマホから沙織という女性に電話をしてしまった。
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