パパLOVE
それから30分くらいして食事を終えた三枝先輩は帰って行った。

時刻はあと10分で上がりの時間になろうとしていた。

「西島さん」

帰られたお客様の席を片付けていると、先輩から声をかけられた。

「はい、どうしました?」

「西島さんの友達のイケメンくんが忘れ物をしていったのよ。よりによってSuicaカードなの。明日ないと困るだろうから、連絡してあげてくれない?」

「私がですか?」

「困ってると思うからお願い。友達なんだから連絡先くらいわかるでしょ?」

先輩は私と三枝先輩が友達だと思っているみたいだけど全然違う。

連絡先だって…さっき渡されて知ったくらいだし。

「わかりました。電話してみます」

私はそう言って、1度バックルームに戻り、三枝先輩に渡されたメモを見ながら電話をかけてみた。

プルルルル――プルルルル――

『もしもし』

『モシモシ、ニシジマデス』

嫌々電話をかけたので感情のない話し方になってしまった。

「西島さん?知らない番号から突然かかってきたからビックリしちゃったよ」

「Suicaカードを店に忘れてますよ」

「えっ…本当に?」

「本当ですよ。私が嘘をつくメリットは何もないですから」

「あれ?確かにポケットに入っているはずのSuicaがないよ」

だからここに忘れてきてるって言ってるでしょ!

何を聞いてるの!

「取りに戻って来られますか?」

「もう少しで駅に着いちゃうんだ。とりあえず今日は切符を買って電車に乗るよ」

「そうですか」

「明日学校で返してもらうことって出来るかな?」

「それくらいなら、別にいいですけど」

「そうしたら、申し訳ないけど明日よろしくね。じゃあねバイバイ」

「それじゃあ…」

電話を切ったあと、もしかしてわざと忘れていったんじゃないかと思いついてしまった。

私が三枝先輩に電話する可能性が高いからきっとそうしたんだ。

結果的に、アイツの思う壺になってしまった。

私のスマホの番号を教える形になってしまった。

何か悔しいな…。
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