パパLOVE
教室に行くと、舞香と詩美に先程あった出来事を聞いてもらった。

「それだとちょっと困るよね」

「今度来たら追い返してやるよ」

「私も香澄ちゃんを守るから安心して」

舞香はそう言うと、イスに座る私を背後から抱きしめてくれた。

こうして舞香に抱きしめてもらうとあったかくて優しい気持ちになる。

「2人ともありがとね。でも、三枝先輩の周りには熱狂的なファンの連中が沢山いるから2人を危険な目にあわせる訳にはいかないよ」

「安心しろ。危害を加えられそうになったらぶん投げてやるよ」

「私も得意の背負投で投げ飛ばすから」

2人は護身用に同じ柔道の道場に通っている。

詩美は何となくわかるけど、お淑やかで上品なお嬢様の舞香が柔道をやっているのは意外でしかなかった。

そんなこんなで2時間目の休み時間になった。

三枝先輩とは朝下駄箱でSuicaを返してからは会っていない。

教室にもまだ現れてはいなかった。

でも、大抵やって来るのはこの時間なんだよなぁ。

「香澄ちゃん、来たよ」

「アイツ、ホントにしつこいな」

やっぱり来るのはこの時間なんだよな。

「西島さんっ」

三枝先輩は教室のうしろのドアから私の名前を呼んで手を振ってきた。

マジでキモいんですけど…。

「香澄ちゃん、行くの?」

「うちが行ってきてやるよ」

「名指しで呼ばれちゃったし、行ってくるしかないよ。ちょっと待ってて」

私はそう言うと、廊下で待つ三枝先輩のところに嫌々ながら歩いて行った。

教室を出ると三枝先輩がいて、その近くには三枝ファンが沢山いた。

この状況でよく私のところに来られたものだ。

三枝先輩が責められることはなくても、被害にあうのは私なんだ。

自分だけ良ければそれで良いのかって感じ。
< 72 / 377 >

この作品をシェア

pagetop