龍神様のお菓子
幼馴染の男
「それでは、以上でオリエンテーションを終了します」
入学初日。ようやく終了したオリエンテーションに溜め息を吐く。慣れない環境、慣れない人間関係。そのどれもが、夢香の体力を消耗させるのには十分だった。
「あの」
疲れた表情で貰った入学資料を整えていると、ふと誰かに声をかけられた。声のする方へ顔を向けると、そこには大柄の男が立っていた。男はどこか緊張した面持ちで首筋に手を当てている。
「あんた、もしかして松木?」
「そうですけど…」
「俺のこと覚えてねぇ?小中一緒だった」
「えっと…」
突然の質問に、夢香は慌てて疲れ切った脳みそをフル回転させる。こんな、長身の爽やか君。同級生なら忘れるはずもないのだが、残念ながら夢香の検索欄にはヒットする者が居ない。
「えっと、えーっと…」
少し期待の入り混じった表情でこちらを見つめる男に夢香は「どこかでお会いしましたっけ?…」と遠慮気味に質問する。
「小鳥遊…、小鳥遊 昴《たかなし すばる》。小学生の時家が隣同士で、よく一緒に登下校してた」
夢香はそこまで言われて「あ!」と小さな男の子の記憶を思い出す。
「え?!昴君なの?…」
180センチを超えそうな高身長、少し長めの黒髪は無造作に整えられており、昔の昴とは似ても似つかない男前な雰囲気に夢香は素直に驚く。
「まぁ…、しゃあねぇよ。お前が転校しちまったの小学生の時だからな」
昴はどこか照れ臭そうに頬をかく。
「でもびっくりした、まさか昴君も同じ大学だったなんて」
「俺も、まさか本当に松木だとは思わなくて、声かけんのどうしようか迷った…」
久しい再会に、二人は一緒にキャンパスの廊下を歩く。途中、昴のファンらしき女子が頬を染めてこちらを気にしていたが、夢香の顔を見るなり直ぐにどこかへと姿を消してしまった。
「でも、昴君身長伸びたねー、何センチ?」
「今、183」
「うわ!すごい!バスケット選手みたい」
少し大袈裟に反応して見せると、昴は恥ずかしそうに首筋をかいた。
「残念、バレーボール。俺、ここの大学バレーボール推薦で入ったから…」
そう言って、斜め掛けのスポーツバックを夢香に見せる。そこには、大学名である帝都大の名前と共に大きくバレーボールクラブと書かれている。
「すごい!確かうちバレーボールの強豪校だよね?」
夢香は驚いた様子で口元に手をあてる。
「すげぇでしょ」
「うん!凄い!」
素直に、尊敬の眼差しを向ける夢香に昴は「…そこは突っ込めよな」と恥ずかしそうにそっぽを向いた。
お互いの近況報告や思い出話に花を咲かせていると、ふと見知った顔が夢香の視界に入った。
「…あれ」
一瞬、幻覚?と思い目を擦ってみたが、確実に昨日会ったことのある男が前方から、ふらふらと手を振りながら近づいてくる。そしてー、
「あれ、夢じゃん!奇遇だね!こんなキャンパスで出会うなんて!」
わざとらしく声をかけてきたのは、つい昨日面接をしてもらったばかりの菓子屋の男であった。
入学初日。ようやく終了したオリエンテーションに溜め息を吐く。慣れない環境、慣れない人間関係。そのどれもが、夢香の体力を消耗させるのには十分だった。
「あの」
疲れた表情で貰った入学資料を整えていると、ふと誰かに声をかけられた。声のする方へ顔を向けると、そこには大柄の男が立っていた。男はどこか緊張した面持ちで首筋に手を当てている。
「あんた、もしかして松木?」
「そうですけど…」
「俺のこと覚えてねぇ?小中一緒だった」
「えっと…」
突然の質問に、夢香は慌てて疲れ切った脳みそをフル回転させる。こんな、長身の爽やか君。同級生なら忘れるはずもないのだが、残念ながら夢香の検索欄にはヒットする者が居ない。
「えっと、えーっと…」
少し期待の入り混じった表情でこちらを見つめる男に夢香は「どこかでお会いしましたっけ?…」と遠慮気味に質問する。
「小鳥遊…、小鳥遊 昴《たかなし すばる》。小学生の時家が隣同士で、よく一緒に登下校してた」
夢香はそこまで言われて「あ!」と小さな男の子の記憶を思い出す。
「え?!昴君なの?…」
180センチを超えそうな高身長、少し長めの黒髪は無造作に整えられており、昔の昴とは似ても似つかない男前な雰囲気に夢香は素直に驚く。
「まぁ…、しゃあねぇよ。お前が転校しちまったの小学生の時だからな」
昴はどこか照れ臭そうに頬をかく。
「でもびっくりした、まさか昴君も同じ大学だったなんて」
「俺も、まさか本当に松木だとは思わなくて、声かけんのどうしようか迷った…」
久しい再会に、二人は一緒にキャンパスの廊下を歩く。途中、昴のファンらしき女子が頬を染めてこちらを気にしていたが、夢香の顔を見るなり直ぐにどこかへと姿を消してしまった。
「でも、昴君身長伸びたねー、何センチ?」
「今、183」
「うわ!すごい!バスケット選手みたい」
少し大袈裟に反応して見せると、昴は恥ずかしそうに首筋をかいた。
「残念、バレーボール。俺、ここの大学バレーボール推薦で入ったから…」
そう言って、斜め掛けのスポーツバックを夢香に見せる。そこには、大学名である帝都大の名前と共に大きくバレーボールクラブと書かれている。
「すごい!確かうちバレーボールの強豪校だよね?」
夢香は驚いた様子で口元に手をあてる。
「すげぇでしょ」
「うん!凄い!」
素直に、尊敬の眼差しを向ける夢香に昴は「…そこは突っ込めよな」と恥ずかしそうにそっぽを向いた。
お互いの近況報告や思い出話に花を咲かせていると、ふと見知った顔が夢香の視界に入った。
「…あれ」
一瞬、幻覚?と思い目を擦ってみたが、確実に昨日会ったことのある男が前方から、ふらふらと手を振りながら近づいてくる。そしてー、
「あれ、夢じゃん!奇遇だね!こんなキャンパスで出会うなんて!」
わざとらしく声をかけてきたのは、つい昨日面接をしてもらったばかりの菓子屋の男であった。