助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 少年はか細い声で言うと、倒れ込むようにして地面に頭を付け、懇願した。

「お願いします! 図々しいですが馬車に乗せてください! このままでは妹が凍えて死んでしまいます! お金はありませんが、どうか、どうか……」

 先ほどまで官僚の圧政を受ける民の話をしていたふたりの行動は素早かった。

「では君、私の背中に乗ってください。馬車で近くの村まで送り届けましょう。ラルドリス様、そちらの子をお願いできますか」
「わかっている」

 少年をシーベルが負ぶり、ラルドリスは毛布ごと少女を抱き上げた。

「メル殿は、申し訳ないですが少女の容態を見てあげてくれますか?」
「は、はい!」

 メルは一足先に戻ると、鞄に仕舞った薬を確かめに行く。手持ちでどうにかできる病ならいいが……。
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