助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね


貧しい兄妹を乗せた一行は、空が茜色に染まる頃、ある村で足を止める。

「本日はここで休みましょう」
「仕方ないな。……あいつらのこともあるし」

 ラルドリスは、馬車の荷台を見やる。そこには、数時間前に拾った兄弟が仲良く眠っている。このまま彼らを旅に連れていくこともできないし、食料の補充や馬の疲れなど諸々の問題がある。
メ ルの魔法に頼るという手もあるが、王都に近付くほど襲撃に備える必要もあり、護衛のためにはなるべく余力は残さないといけない。ラルドリスにも内心焦りはあるのだろうが、それだけではどうにもならないことだった。

「さすがに連日の野営はこたえますし、どこか泊めてくれる場所を探いたいですね。彼らの処遇も相談したいですし、できるなら温かい食事にもありつきたい」
「ですね……食料品なんかも融通してもらえれば」

 襲撃を警戒する身では、毎度火起こししてこちらから居場所を教えるわけにもいかない。
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