助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 数日振りの火の通った食事が恋しいのもあり、メルたちは(くつわ)を持って馬車を曳かせる彼らと並び、村の通りを進みながら様子を見ていった。
 幸い、村人同士の交換所のようなものを見つけ、一行は手分けして交渉し、カブや人参など、まだ泥の付いた新鮮な野菜や干し肉などを譲ってもらう。

「助かったよ。最近こっちでは税金がどんどん上がっちまって……いくら頑張って育てた作物を売ったって全然追いつきゃしなくてさ」
「そんなに厳しいんですか」

 メルは小麦粉の袋を売っていた、快活な表情の婦人から商品を受け取ると眉を下げた。
 この品だってフラーゲン領の相場の二倍はするのに、それでも生活が苦しいとのは、彼女の着古した衣服などからも見て取れる。

 ……他人の事情に気を取られてばかりではいけない。メルたちも食料品の補充だけではなく、休める場所を探さないといけないのだ。

「あの……この辺りにどこか宿のような場所は――」
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