助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「お前ら、いい加減に――」
(ダメです、静かに!)

 憤るラルドリスをシーベルが引き留める。
 気持ちは分かるが彼らにも目的があるし、ここで正体を明かしてザハール派に所在を知られれば、瞬く間に街道は封鎖され、一行は捕縛されてしまう。悔しいが見ているしかないのだ……。

 ほぼ洗いざらい作物を奪うと徴税官は村人たちを見下し、「今後もアルクリフ王国のために励むのだな」と、吐き捨てて去っていった。村長らしき老人が入り口で項垂れる。

「皆、すまん……」
「あたしたちの事情なんてお構いなしかい、くそったれが!」

 村人たちは呆然と膝を突くとすすり泣き、兵士たちの蛮行を嘆いた。この場所に居合わせたラルドリスたちも、戸惑いと悲痛さを隠せない。

「くそ、シーベルなぜっ……! ……いや、悪かった。今の俺たちでは、なにもしてやれないのは明白だったな……」
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