助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「えっ、べ、別に歩けますよ!? 下ろしてください!」
「うるさい、馬車まで運ぶだけだ、静かにしてろ。俺だけ役に立ってないから落ち着かないんだよ」
「はぁ……」

 彼の苛立ちの理由が分からず首を捻るメルに、小麦売りの女性はくすりと笑うと手を差し出した。

「あんたたち、なんか面白い人たちだね。あたしゃベネアっていうんだ、よろしく。早速あたしんちに案内するよ。狭いところだけど、ゆっくりしてってくんな」

 頼りがいのありそうな、女性にしてはしっかりした大きな手が、メルの手をぎゅっと包んだ。
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