助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

風車小屋の少女②

 ベネアという女性の家に移動する道すがら、メルたちはあの村長宅に、道中で見つけた兄妹を預けてきた。
 村長は村を救ってくれたことをいたく感激し、養父母となってくれる者を村から募ってくれるという。人口の少ない村ではどの家も若い働き手は求めてやまないから、大事にはしてもらえるだろう。
 別れ際に頭を撫でてやると少女が寂しそうな顔をしたので、メルは侍女の服に付属していた黒いリボンを一本抜くと、彼女の髪を結んであげた。小さな思い出でも、なにかしら生きる力に変わることを願って。

 その後ベネアは、畑の脇道を歩きながら、自らの素性や、この村について話してくれた。
 ここはクーニュという村で、農作物の生産などで生計を立てているらしい。どうやら彼女は農家から刈り入れた小麦を買い入れ、自分で粉にして売っているのだという。ということは……。

「ここがあたしの風車小屋さ、立派でしょ」

 村近くの小高い丘に立っていたのは、やや年代物だが、大きな風車小屋だった。隣にある小さな建物が住居なのだろう。
 彼女たちは一家でここを管理しているらしく、ベネアは扉を開けると大声を張り上げた。

「ハーシア、お客さんが来たよ! 挨拶しな!」
「えー、お客さん? ちょっと待っててよ、もう少しで油さしが終わるから!」
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