助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「ところがどっこい、明日からまた忙しくなるよ。この子が山ほど小麦をこさえてくれたからね。なんと彼女、魔女なんだって……。本当、すごい魔法だったんだよ」

 そのベネアの言葉にハーシアは若干がっかりしたようだ。

「あらら、それじゃ明日からも仕事か……しばらくゆっくりできると思ってたんだけどなー。にしても、魔女なんて本当にいるもんなんだね。色々話聞かせてちょうだいよ!」
「え、ええ……」

 年下の少女の快活さに押されながら、メルたちは風車小屋を後にする。ベネアが小屋の戸締りをしっかりと確認する中、シーベルたちはベネアを気遣って麦の袋を運び出すのを手伝い、メルは力がないのでハーシアと並んでそれを見ていた。

「魔女って言うけど、なんかお世話係の人みたいな格好だね? メルちゃん」
「色々ありまして……」

 思えば年の近い女の子と話すのは久しぶりだ。メルは彼女たちがどんな暮らしをしているのかが全然分からない。でも、そのあかぎれの浮かぶ手を見ると、きっと楽な生活はしていないのだと思う。
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