助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「あのこれ、お近づきのしるしに。手荒れに効くと思います」

 メルは鞄から祖母から教わって作ったクリームを取り出した。それをまじまじと見るとハーシアは照れたように笑みを浮かべ、早速手に薄く塗り、匂いを嗅いでポケットにしまった。

「ありがとね。へへ、いい香りだ。こういうの、うちの村では貴重だから、大事に使わせてもらうよ」

 ハーシアは嬉しそうに手のひらを上に翳すと、背中を風車小屋に預けながら尋ねた。

「ね、魔法って、どんなことでもできるの?」
「え? いえ……たいしたことはできませんよ。今回のことは特別な道具を使ったからで、もう一度やれと言われても無理ですし」
「そっか、そうだよね」

 軽い調子だったが、ハーシアがメルの方を見る目には、わずかな落胆が感じられる。

「ごめん、変なこと聞いちゃった。もしかしたら、あたしを男にしてくれないかなって、思ったんだ」
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