助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 自分のことばかり話してごめんと言った彼女に、メルも自分が親に捨てられ、頼りにしていた祖母を失ったことを打ち明けた。

『ありがとう……話してくれて』

 すると自分と同じような境遇の人間がいること知って安心したのか、その後ハーシアは目を閉じて眠ってしまった。彼女の重たい荷物を少しでも受け取ることが出来たのならよかったと、メルは思う。
 つらいこと、悲しいこと。たとえ受け止められずに心が壊れてしまいそうなことがあったとしても――生きている限り、皆それぞれなにか目的を見つけ、いつかは立ち上がって先に進まないといけない。
 ハーシアはちゃんとそれを理解し、前に進んでいる。なら、自分はどう生きてゆけば……何を目的にしたらいい?

(私は……? この旅が終わったら――)
「おい、どうした」

 声がして隣を見ると、ラルドリスの眠たそうな顔があった。いつの間にか起き出してきたようだ。

「いえ……考えごとをしていただけです。ちゃんと眠れました?」
「子供じゃあるまいし馬鹿にするな、と言いたいところだがな……」
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