助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 しょぼしょぼした目を瞬きさせながらラルドリスはあくびをした後、こんなことを言った。

「寝床でべネアやハーシアについて少し考えていたら、朝になっていた。アルクリフ王国の法律では、その世帯の収入源を担っていた人物が死亡し、遺族に若年者が含まれていた場合、その者が成人するまで一定の生活費を支給される制度がある」
「えっ……本当ですか?」

 いきなりそんなことを言い出した彼に、メルは驚く。ラルドリスの口から法律の話を聞くなんて思いもよらず……。その態度に、彼からは不満げな言葉が返ってきた。

「あるんだよ。お前、俺が何にも知らない阿呆だと思ってたろ。でも王族ってのはな、世間のことは詳しくないが、自分の住む国のことについてくらいは、ちゃんと勉強してるもんなんだ」
「お、お見それしました」
「シーベルとの話を聞いた限り、べネアにその知識はなかったようだな。本来なら本人の死亡を役場に届けた時点で、そういった説明もされるはずなのだが……あの様子だと、なんらかの理由で伝える役割の者が省いたのだろう。今掛け合っても恐らくはもう無理だ」
「そんな……」
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