助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「自分の目で物事を見るというのは本当に重要だな。今回のことは、(ただ)すべきことの一つとして、胸に置いておかなければ。シーベルは目端が利く男だからうまくやってくれるだろうが、俺もこの経験を生かして自分になにかできないか、少し考えてみる。……ふわぁ」
「そうですか……」

 欠伸を噛み殺したその姿を見て少しだけ……メルは彼を助けたこと、こうして旅についてきたことが間違っていないのだと思うことができた。
 彼が王妃を救い出した後どうなるかはわからない。けれど、きっと彼は国民の方を向いて自分のなすべきことを逃げずに果たしてくれるようになる。そんな期待が高まった。

 そこでメルは上を見た。気付けば家の煙突から、もくもくと白い煙が吐き出されている。

「あっ……! 私、べネアさんになにかお手伝いできることがないか聞いてきます」
「ちょっと待った」

 せめて朝食の準備くらいは手伝おうとその場を駆け出すメルの腕をラルドリスが掴み、井戸を指差した。
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