助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
ハーシアが、握る手に力を込めた。彼女の瞳からは、こちらを案ずる気持ちが強く感じられる。
彼女には彼女の目的を見つけたのだ。せっかく前に踏み出したその足を鈍らせないように、メルも手を離し際、ぐっと握り返す。
そして歩きだした。二歩、散歩と距離が開いてゆく。
けれど想いはちゃんと伝わったのだろう、ハーシアは出会った頃のように明るい顔で、胸を張り大きく手を振ってくれた。ベネアもそれに合わせて叫ぶ。
「皆、また来てね~! メルちゃん、あなたならきっとできるよ!」
「あんたら、飯だけはちゃんと食いなよ!」
ふたりが乗り込むと、馬車はゆっくりと動き出した。後ろから、親子の声が追ってくる。窓を開けたメルはそちらへ向けて一生懸命手を振り、ラルドリスは静かにそれを見守る。
そして姿が見えなくなった頃。座席に座り直し、瞼をこするメルに、力を抜いた表情のラルドリスが尋ねてきた。
「なにを話してたんだ? 少し目が赤くなってるじゃないか」
「……気のせいですよ。ラルドリス様の方こそ、どうでした? 普通の村人としての生活は」
彼女には彼女の目的を見つけたのだ。せっかく前に踏み出したその足を鈍らせないように、メルも手を離し際、ぐっと握り返す。
そして歩きだした。二歩、散歩と距離が開いてゆく。
けれど想いはちゃんと伝わったのだろう、ハーシアは出会った頃のように明るい顔で、胸を張り大きく手を振ってくれた。ベネアもそれに合わせて叫ぶ。
「皆、また来てね~! メルちゃん、あなたならきっとできるよ!」
「あんたら、飯だけはちゃんと食いなよ!」
ふたりが乗り込むと、馬車はゆっくりと動き出した。後ろから、親子の声が追ってくる。窓を開けたメルはそちらへ向けて一生懸命手を振り、ラルドリスは静かにそれを見守る。
そして姿が見えなくなった頃。座席に座り直し、瞼をこするメルに、力を抜いた表情のラルドリスが尋ねてきた。
「なにを話してたんだ? 少し目が赤くなってるじゃないか」
「……気のせいですよ。ラルドリス様の方こそ、どうでした? 普通の村人としての生活は」