助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「なにをす……りゅんです! 返してくれ!」
「むう……茶髪に鳶色の瞳か」

 だが、やはりその髪はザハール第一王子から手配された第二王子のものとは似つかず、生え際にも不審なところはない。兵士がさらに顔を覗き込もうとしたその時。

「ァアイタタタタタットゥワー……! こ、腰がぁっ、ポッキリいってしまいそうじゃぁッ!!」

 大袈裟とも言える勢いで、それまで黙っていた杖突き老人が急に倒れ込み、四つん這いになって大声で騒ぎ始めた。
 
「な、なんだ! どうした御老体!」
「ら、乱暴に触らんでくれぇ!」
「お爺ちゃん、また持病が!? 腰が痛むのね、可哀想に!」

 すぐにトルスの妻アニスが背中をさすってやり、困り果てた様子で兵士に訴える。

「連日の冷え込みのせいか、祖父が急に体調を崩しまして。早く街で休ませてあげたいのです。ですから……なるべく速やかに通していただけませんか? 荷物はいくらでも調べていただいて構いませんので、どうか、お願いします……!」
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