助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「む……それは不憫であるな。どうだお前たち、なにか不審なものは見つからなかったか?」
「いえ、日用品や子供のおもちゃばかりです。武器なども一切ありません」
「そうか……」

 彼らのまとめ役らしい兵士は、最後に手配書と一行の容姿をしっかり見比べる。

「……ラルドリス王子は見事な金髪、赤眼の美青年、シーベル公爵は紺色の髪をした細面の男性。連れは栗色の髪の、背の低い侍女だったはずだな。お前たちも、頭に巻いているものを外せ」

 トルス一家はそれぞれ、防寒具として頭に巻き付けていた布を外した。しかし、髪の毛は黒や薄茶ばかり。手配書の内容とはまったく相容れない。

「こんなじじいや子供連れだとは聞いてませんよ?」
「そうだな。一行は確か三人連れ。馬車でこちらに向かっていると伝えられていたし……よし! こいつらは違うだろう。いいぞ、通れ!」
「「あ、ありがとうございます!」」
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