助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 その甲斐あってか……なんとか兵士には見破られずに済んだものの、メルとしてはいつバレないか気が気ではなかった。ちなみにあの模型だって、今まで乗っていた馬車をメルが魔法で一時的に変化させたものである。もしラルドリスを狙っている魔術師が関に詰めていたなら見破られる恐れもあったが、運よくそれは免れ、関所抜けは見事成功した。

「チチッ!」
「はいはい。あなたも役に立ってくれてありがとうね」

 貢献を主張するようにチタが肩に登ったので、メルはクルミを与え労ってやる。最後だけは危うかったが、彼はメルの言いつけ通り大人しくしておいてくれた。さすが相棒、ただのリスでは無いのである。
 もしゃもしゃと動くチタの頬袋を興味深そうにラルドリスが突く中、懸念されていた関越えを果たしたシーベルの表情は明るかった。

「さあ、これでようやく道が開けました。後は王都に乗り込んでどうするか、といったところですが。とりあえずは一旦、ルシェナの街で小休止しましょう」
「少しでも早く……と言いたいところだが、何か考えがあるのだな?」
「色々と段取りが必要なのですよ。ですからお時間をいただきたく」
「わかった」
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