助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 ラルドリスはメルの方を真っ直ぐ向き、手を差し出して言った。

「信頼できる仲間が欲しいんだ。改めて、頼む。傍にいて俺を手伝ってくれないか。メル」
(本気……だったんだ)

 その情熱的な瞳に思わずハッと息を吞んだメルの胸に、大きな葛藤が生まれる。
 祖母の後を継ぎ、ナセラ森を守らなければならないという気持ち。
 それと相反し、ラルドリスの傍にいて、彼を友人として支えてあげたいという気持ち。

 贖罪と願望が(せめ)ぎ、どうした経緯で自分の口からそれが出たのかは、正直わからない。
 だが、気付いたらメルはあることを尋ねていた。

「その前に……ひとつだけ、聞いてもいいですか」
「なんだ? 俺の知ることならなんでも」
「ティーラという女性を、ご存知ですか」

 その質問にラルドリスは訝しむ。
 しかし躊躇せずにはっきりと答えてくれた。
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