助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

ずっと支えてくれていたもの

 ――私は、本当の家族に必要とされなかった……。

 ラルドリスたちが宿を発って一日が過ぎ……その後もなお、メルは目覚めずにいた。
 閉ざした心が生んだ夢の片隅に座り込み、これまでの色々なことを思い返していた。

 物心がつくころには、自分から興味を失くしてしまった両親。
 上辺だけの感情が交わされ、どこか無機質で、温かみの感じられない貴族の家。
 容姿、頭脳、そして人心掌握のいずれにも優れ、唯一の拠り所であった姉。
 しかしそれにも見放され、メルの心には少しずつ、他人への興味が失われていった。
 声をかけようとしても、間に見えない壁があって、想いが決して伝わらないような気がした。
 
 ――花は、草木は、自然は好きだ。彼らは、私につらい気持ちを向けてこない。ここにいてもいいと、受け入れてくれる気がする。

 庭に出ているのが好きだった。
 日がな一日、ぼんやりと美しい自然を眺めているのが。
 決して彼らと、心を触れ合わせることは出来ないけれど。
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