助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
隣でうっすらと、温かい気配を感じた。
それは、ぼんやりとした輪郭だけで、はっきりはしない幻のようなものだったけれど。
なんとなくメルにはそれが祖母なのだと感じられた。
それは手を持ち上げると、遠くに立つラルドリスの方を指差す。そして。
『行っておあげ。勇気を出して』
そんな声が聞こえた気がした。
――うん。
その言葉に背を押され、メルは不確かな闇の中一歩を踏み出す。居心地のいい虚無から……元の世界へと戻るために。
本当はもっと、祖母と話をしたい。いや、話なんてできなくてもいいから、傍にいたい。
けれど、こんな自分を求めてくれる人が、待っている。
それに他ならぬ彼女がずっと教えてくれていたのだ。怖くても傷付いても、胸に抱いた想いを誰かに伝え、行動すること――自分を信じることの、大切さを。
それは、ぼんやりとした輪郭だけで、はっきりはしない幻のようなものだったけれど。
なんとなくメルにはそれが祖母なのだと感じられた。
それは手を持ち上げると、遠くに立つラルドリスの方を指差す。そして。
『行っておあげ。勇気を出して』
そんな声が聞こえた気がした。
――うん。
その言葉に背を押され、メルは不確かな闇の中一歩を踏み出す。居心地のいい虚無から……元の世界へと戻るために。
本当はもっと、祖母と話をしたい。いや、話なんてできなくてもいいから、傍にいたい。
けれど、こんな自分を求めてくれる人が、待っている。
それに他ならぬ彼女がずっと教えてくれていたのだ。怖くても傷付いても、胸に抱いた想いを誰かに伝え、行動すること――自分を信じることの、大切さを。