助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 ――お婆ちゃん、私、やってみるから。

 メルは一度だけ振り返り、祖母の姿を見つめた。
 表情もなにもない、のっぺりした影のような姿だ。けれど、どこかそれは……喜んでいるようで。

 ――行ってきます。

 気付けば進むほどに闇は、メルの目の前で夜明けの様に薄まり始めていて。
 朱色の光に手を触れた瞬間。
 放たれた虹のような煌きが身体を通り抜けると、背中の後ろに燻っていた闇を薄め――……。


「――あっ! お、起きたんだね、あんた。よかったねぇ」

 メルの視界に、色づいた世界が映り込んでいる。

「――っ、ここは!?」
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