助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 説得は失敗し、兵士たちの殺気が目に見えて膨れ上がった。もはや、戦って切り抜ける以外の方法は残されていないようだ。ラルドリスが苦々しそうに呟く。

「痴れ者どもが……」
「やれやれ……この様子だと、軍部を掌握するのにも骨が折れそうですね。白兵戦はあまり得意ではないのだが。殿下、お背中をお守りします!」
「シーベル、簡単にやられるなよ!」

 抜剣したラルドリスたちに、我先にと下級兵士が群がってゆく。
 しかし、それを見るふたりの目は冷静だった。
 背中合わせになると、突出した者から順に攻撃を打ち払い、一撃で仕留めていく。

「若造と侮ってもらっては困るな! こちとら幼い頃から自衛のために宮廷剣術を叩き込まれているんだ。身体を動かすのは苦手じゃない!」
「ふう、やれやれ。私の方は汗と血で服が汚れるのがなんとも苦手ですがね。殿下、御油断召されませぬよう」
「わかっているさ」
「……やりおる! 手練れだな……」
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