助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 瞬く間に数人の兵士が倒れ、小隊長は歯噛みする。

「お前ら、慎重に取り囲め! 単独ではかかるな!」

 そうは言うが、下級兵士は恩賞に目が眩んでいる。我先に飛びかかってはふたりの息の合った剣術に翻弄され、着実に数を減らしてゆく。
 三十ほどもいた兵士たちが、半分ほどになり……小隊長はたまらず兵を引かせた。

「者ども、一旦下がれ……!」
「どうした、打つ手はもうないのか? ならば黙って囲いを解け! ここで引けば、貴様らの罪は問わん! 最後の忠告だぞ!」
「他ならぬ殿下がこうおっしゃっているのだ! 温情に感謝し、今すぐ道を開けよ! 無駄に罪を重ねるな!」

 貴人たちの叱声に、退いた兵士の迷いが生じるのを見て、小隊長は悔しそうに懐からあるものを取り出した。

「せめて王族として尊厳ある死をと思ってやったが、仕方あるまい……。身に着けたもので持ち帰れば証としては十分よ! 闇の獣に骨まで食い散らかされるがよい! 『魔物よ、我が憎しみを標とし、仇の血肉を啜れ』!」
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