助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「いい加減に立場を弁えなさい! あなたには、この国の未来が懸かっている!」

 今まで聞いたことのないくらい厳しい声で、シーベルはラルドリスを叱る。
 そして顔だけを彼の方に向けた。

「ジェナ様に――姉上に頼まれたからこうするのではありませんよ。私があなたを守ると決めたのは、権謀術数渦巻く宮廷にいながらも、悪意に染まらぬ純粋な心を持つあなたなら、きっとこの国を照らす唯一の光になれると信じているからです」

 清々しい笑みを作ったシーベルは再び剣を構え、次は確実に彼らを仕留めるべく両目の再生を待つ獣と向かい合った。

「さあ……行くのです。そして姉上を救い、ザハール王子からこの国を、民の幸せを守ってください。それが、あなたの持つ責任なのですから」
「そんな、勝手なことを……っ」

 ここまで言われても……ラルドリスは退くことができなかった。
 シーベルは、ラルドリスにとって、数少ない全幅の信頼を置く配下というだけではなく、実は……彼の叔父にあたるのだ。
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