助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 攻撃の手段はメルにもあるが、防御と同時には行えない。まじないの隙間にあんな巨大なものから攻撃を受けたら、一撃で致命傷だ。ラルドリスにはっきりと答えたはいいが……有効な手だてが見つからなかった。

 小手調べか魔物が動き、再生の終えた太い前脚をメルに叩きつけようとする。

(く……)

 メルは今度は大地から土の壁を生成すると、それを防いだ。
 幾度かそんな攻防が続き、メルが冷や汗を首筋に伝わせていると……。

「チピッ……!」
「チタ、隠れてなさいって!」

 ローブのフードから顔を出したチタが、肩の上に這い上ってきていた。
 メルは魔物の行動を注視しつつ、チタにちらちら目をやる。どうも彼は何かを訴えかけるようにじっとこちらを見ている。

「もしかして、手伝ってくれるの?」
< 191 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop