助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 メルが巨大化したチタの頭の上にぶらさがりながら魔物を指差すと、彼は見た目に似合わぬ俊敏さを見せ、駆け出した。メルは振り落とされないよう、その長い毛を結んで自分の腰を固定する。

「グルオォッ!」
「ヂイッ!」

 接触した二体が俊敏な動きで殴り合いを始める。魔物の爪がチタの毛皮を切り裂き、チタも自慢の硬い歯でかぶり付いたり引っ掻いたりで相手の身体を削る。

(聞いた通りだ……埒が明かない。核を早く見つけないと。一体、どこに)

 しかし、魔物は再生するのだ。チタも大地の力で大きく生命力を増しているとはいえ、長期戦になればこちらが不利。

 メルは目を凝らした。魔法の源たる魔力の力……それがより強く集中している場所を、感じ取ろうとする。

『皆、気付かないものなのだよ。この世界の私たちを包む、あらゆるものに本来魂が宿っていることを。生命に触れてごらん、お前にもきっとその息吹が感じ取れるはずだよ』
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