助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 確かな手応えと共に、魔物が大きく悶える。
 しかし相手は滅ぶまで使命を果たそうとする超常の化け物。
 より勢いをました攻撃で、チタを苦しめる。

「ヂュウウ……!」
「頑張って……!」

 このような獣と戦うのは恐いだろう、怖ろしいだろう。だが、チタはそれを振り払うとメルの声に応え、必死でその腹にかぶりついている。

(私も……逃げるもんか!)

メルも爪が何度も頭の上や服の裾を掠めたが、決して目を逸らすことはしない。チタに大きく声を掛け、必死に鼓舞する。
そして――。

 ――バ、キッ……!
 ついに、決定的な破砕音がした。
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