助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
 頑張ってくれたチタの姿が縮んでいく。
 疲労困憊でぺたっと地面に貼りつく彼を労って背中のフードに戻してやる。
 そして振り返ると、丁度向こうでも最後の戦いが終わろうとしているようだった。

(すごい……)

 そこで思わずメルは見入ってしまった。
 ラルドリスは幾人か残っていた兵士たちを打ち倒し、小隊長を圧倒している。
 自分よりも倍ほども歳を経ている歴戦の軍官に対し、剣捌きは流麗で危なげなく、メルのような素人でも彼の才気が感じられるほどだった。

「ハアアアァァッ!」

 甲高い音をさせ相手の剣を弾き飛ばしたラルドリスは、体勢を崩した小隊長の喉元にその剣を突き出し勝負を決する。

「覚悟はいいか……!」
「ま、待ってくれ! いや、お待ちください……命だけは! ザハール王子の命令には逆らえなかったのです! つ、妻子を残して逝くわけには……」
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